大切な人との時間。特別な時間。
何かの記念日には「ワイン de 乾杯!」という人も多いのではないだろうか。
様々な形で人生のひとときを楽しませてくれるワインには、どんな歴史があるのだろう?造られている街はどんな所なのだろう?そして、造り手の想いは。
そんな「ワインをもっと知りたい」をテーマにスタートする「ワイン de トリップ」。
初回は、フランスはパリから北東約120㎞にあるシャンパーニュ「ランス」を紹介しよう。
戴冠式とシャンパーニュの街
フランス北東部の旧シャンパーニュ=アルデンヌ地域圏にある都市ランスは、人口約20万人、パリから高速鉄道TGVに乗ると45分ほどで到着する。
ランスは、歴代フランス国王の聖別戴冠式の舞台となったノートルダム大聖堂があり、有名なシャンパーニュメゾンのカーヴが立ち並ぶ、シャンパーニュの街としても有名だ。
ゴシック建築の傑作
ランスのノートルダム大聖堂は、パリのノートルダム大聖堂の完成から250年後の1475年に完成し、ゴシック様式のカトリック聖堂の傑作と言われ、1991年には隣接するトー宮殿、市内の聖レミ教会堂とともに、ユネスコ世界遺産に認定されている。
今日、聖堂となっている場所には、もともとはカロリング朝の時代に造られたバジリカ聖堂があったが、13世紀にフランス国王の戴冠式を執行するための聖堂として造り変えられたことで、今の形が出来上がっている。
端正な正面ファサード、左右対称の塔は見事な均衡とその完璧さで、調和のとれた美を表現し、そして天蓋まで高さ38mもある外陣の見事な空間は、見る者を圧倒する。
優美で重量感のある正面外観、3つの扉の周囲いたるところに施された素晴らしい立像彫刻がゴシックの傑作とされており、生き生きとした「微笑む天使」や「マリアの従者」は何度も振り返って見たくなる。
そして、西欧建築の裏側から見る多彩なバラ窓、どれをとってもこの驚異的な建築物は訪れる人を惹きつけて止まない。
戴冠式の大聖堂
20世紀になって作られた建物の骨組み部分や高さのある数々の彫像を、大聖堂の塔に登って見ると、ゴシック建築の傑作もまた違った観点から見ることができる。
大聖堂の見学コースは、装飾部分の金箔を張り替える修復が最近行われたばかりの屋根へと続き、歴代フランス国王が戴冠式を行ったランスの街を一望できる大パノラマだ。
合わせて是非訪れていただきたい、史跡トー宮殿には、大聖堂の宝物殿があり、大聖堂にもともとあったオリジナルの彫像やタピスリーのコレクションが並べられている。
もう一つの世界遺産
2015年7月、シャンパーニュの丘陵・メゾン・地下セラーがユネスコ世界遺産に登録された。
観光都市ランスのサン・ニケーズの丘陵には、中世の要塞跡がある。
世界遺産登録の条件でもある、普遍的な価値を満たしている遺跡の一つだ。
その丘陵の中心に位置したシャルル・エドシックの石灰質セラー「クレイエール(採石場跡)」は、世界遺産に追加された遺跡の一部なのだ。
2000年以上も前のガロ=ロマン時代に採掘された、無数のピラミッド(小部屋)と地下回廊からなる迷宮「クレイエール」。
1867年に、この迷路のように入り組んだ地下道と地下室の湿度は、ワインを熟成させるのに理想的だと考え、石灰質セラー「クレイエール」を購入した一人がシャルル=カミーユ・エドシックだ。
当時、このような大胆な決断をしたのは、6つのシャンパーニュメゾンのみで、ワインの熟成方法は、メゾンにとっては重大な投資であったと同時に賭けでもあった。
現代から見れば、これは適切な賭けだったと言えるだろう。
そして、彼等の大胆さと献身さは、この遺産を守り続けているメゾンのアイデンティティーの土台となっているのだ。
世界遺産のあるフランスのランスで、2000年の時の重みを感じられるワインを、是非一度、堪能してみてはいかがだろうか。