旬感食 to ナ美

旬感食 to ナ美 Vol.49「おはぎ」

もち米とうるち米を混ぜて炊き上げ、米の粒感が残る程度に軽くついて丸め、周りをあんこやきな粉などで包んだ「おはぎ」は、材料も工程も非常にシンプルですが、だからこそ素材の味わいがダイレクトに伝わる日本の伝統的な和菓子です。

最大の特徴は、お餅のように完全に滑らかに突き潰さず、お米の食感を残した「半づき」にすることで、この状態を和菓子の世界では「半殺し」とも呼び、おはぎ特有のもっちりとした、それでいて歯切れの良い独特の食感を生み出しています。

 

 

「おはぎ」と「ぼたもち」

おはぎを語る上で欠かせないのが、「ぼたもち(牡丹餅)」との違いで、基本的には同じ食べ物ですが、食べる「季節」によって呼び名と仕立てが変わります。

春のお彼岸は「ぼたもち」、春に咲く大輪の「牡丹(ぼたん)」の花に見立てて、大きめの丸型に作られ、冬を越した小豆は皮が硬くなっているため、皮を取り除いた滑らかな「こしあん」を使うのが伝統的とされます。

秋のお彼岸は「おはぎ(お萩)」、秋に咲く小ぶりで可憐な「萩(はぎ)」の花に見立てて、やや小ぶりの俵型に作られ、秋は小豆の収穫時期にあたるため、収穫したての柔らかく風味豊かな皮をそのまま活かした「つぶあん」が使われます。

このように、季節の移り変わりや自然の草花を愛でる、日本人の繊細な美意識が名前に込められています。

 

 

お彼岸におはぎの理由

おはぎの歴史は古く、平安時代や江戸時代にはすでに庶民の間で親しまれていて、なぜお彼岸におはぎを食べるようになったのかには明確な意味があり、古来より、おはぎに使われる「小豆の赤色」には、魔除けや邪気を払う力があると信じられていました。

また、当時としては大変貴重だった「砂糖」を使うおはぎは、最高のご馳走であって、この大切な食べ物を、ご先祖様への感謝と供養の気持ちを込めてお彼岸にお供えし、その後家族で分け合って食べることで、無病息災を願う風習が定着したといわれています。

 

 

おはぎのバリエーション

定番の小豆本来の風味を存分に楽しめる「あんこ」以外にも、おはぎには魅力的な種類がたくさんあり、「きな粉」は、青のりや塩を少し効かせたご飯を中に入れ、香ばしいきな粉をたっぷりとまぶします。

すりごまと砂糖を混ぜたものをまぶし、プチプチとした食感と濃厚な香りを楽しめる「黒ごま」に、磯の香りが爽やかで、甘いあんこのおはぎと並べると、味のアクセントになる「青のり」もあり、色々な味を楽しむことができます。

 

 

体に嬉しいおはぎの栄養

近年、おはぎは「体にやさしい健康的な和スイーツ」としても再注目されていて、主原料である小豆には、抗酸化作用の高いポリフェノール、便秘解消をサポートする食物繊維、さらにはビタミンB1や鉄分、植物性タンパク質が豊富に含まれています。

洋菓子に比べて脂質やコレステロールが非常に低く、もち米をベースにしているため腹持ちが良いのもメリットで、小麦粉を使わない「グルテンフリー」であるため、健康志向の人やアスリートのエネルギー補給としても愛されています。

 

 

現代における「ネオおはぎ」

おはぎの世界に大きな革新が起きている現代、伝統的な形を守りつつも、見た目やフレーバーを現代風にアレンジした「ネオおはぎ」を扱う専門店が急増しています。

白あんに天然の着色料で色をつけ、お米の上にバラやひまわり、金木犀などの美しい花びらを一枚一枚絞り出した「花おはぎ(フラワーおはぎ)」は、まるで芸術品のような美しさでSNSを中心に大人気です。

また、ココナッツ、アールグレイ、レモン、ナッツなど、従来の和菓子の枠を超えた洋の素材とのコラボレーションも進んでおり、若い世代や外国人のファンも増やし続けています。

 

 

おはぎは、単なる美味しいお菓子というだけでなく、季節の移ろいを感じ、ご先祖様を想い、家族の健康を願うという、日本人が大切にしてきた温かい文化そのものです。

秋お彼岸には、職人が作った美しいおはぎをお取り寄せしたり、家庭でお米を潰して手作りしたりして、おはぎが紡いできた豊かな歴史と優しい甘さに浸ってみてはいかがでしょうか。