日本の猛暑を乗り切るための夏野菜として、今や不動の地位を築いている「ゴーヤ」は、ごつごつとした特異な外観と、他の野菜にはない鮮烈な「苦味」が最大の特徴です。
かつては沖縄や九州南部を中心とした地域限定の伝統野菜でしたが、現在では全国の家庭で日常的に愛される主役級の食材となり、夏の食卓を牽引する「緑のスタミナ源」として知られています。
標準和名は「蔓茘枝(ツルレイン)」、一般的には「苦瓜(ニガウリ)」とも呼ばれるウリ科の植物で、うだるような暑さを払う栄養素を豊富に蓄えたゴーヤは、まさに大自然がくれた「夏の特効薬」と言えます。

ゴーヤの歴史と全国への普及
ゴーヤの原産地は熱帯アジアのインド周辺といわれ、中国を経由し、16世紀末から17世紀の江戸時代初期頃に、独自の交易ルートを持っていた琉球王国(現在の沖縄県)や、薩摩藩(現在の鹿児島県)へと伝わりました。
沖縄の強い紫外線と台風の多い厳しい環境において、生命力の強いゴーヤは貴重な夏場の栄養源として定着し、何百年もの間、宮廷から庶民にまで重宝されてきました。
大きな転機となったのは20世紀末で、沖縄の健康長寿の食文化がメディアで大注目され、郷土料理である「ゴーヤチャンプルー」が大ブームを巻き起こしました。
これにより、それまで馴染みの薄かった本州の市場にも一気に普及し、日本の夏を代表する国民的野菜へと駆け上がったのです。

「苦味」の正体と健康パワー
ゴーヤを語る上で欠かせないのが、独特の強烈な苦味です。
この苦味は単なる刺激ではなく、私たちの体に優れた薬効をもたらす2つの主要成分「モモルデシン」と「チャランチン」によって構成されています。
果皮に含まれる成分のモモルデシンは、胃腸の粘膜を刺激して胃液の分泌を促し、食欲を増進させ、夏バテによる自律神経の乱れや消化不良を改善する効果があります。
植物ステロールの一種のチャランチンは、インスリンに似た働きをすることが分かっていて、血糖値を安定させる効果があり、生活習慣病の予防に貢献します。
まさに「良薬は口に苦し」を体現する食材であり、夏の疲れた体を内側からシャキッと目覚めさせてくれます。

夏バテを吹き飛ばす驚異の栄養価
ゴーヤはビタミンやミネラルが凝縮された栄養の宝庫で、レモンの約1.5倍、トマトの約5倍ものビタミンCを含み、通常は加熱に弱いビタミンCですが、ゴーヤの場合は強固な細胞壁に守られているため、炒めても壊れにくいのが大きな特徴です。
紫外線ダメージから肌を守り、疲労を回復させるカリウムは、体内の余分な塩分と水分を排出し、血圧の上昇を抑えるとともに、夏の水分摂りすぎによるむくみを解消します。
また、不溶性食物繊維が豊富で、腸の動きを活発にして便秘を解消し、免疫力を高めてくれます。

苦味を旨味に変える調理の極意
ゴーヤは「苦すぎて苦手」という方でも、正しい下処理と食材の組み合わせを工夫すれば、苦味を心地よい「コク」へと昇華させることができます。
苦味を抑える下処理の一つが「綿(わた)」をこそぎ落とす事で、綿自体よりも残った水分が苦味を引き立たせるため、ゴーヤを縦半分に切り、スプーンで内側の白い綿をきれいに取り除くのが重要です。
薄切りにした後、塩を振って軽く揉み、10分ほど置いたら出た水分をしっかりと絞り、苦味をさらに抜きたい場合は、熱湯で10~20秒ほどさっと茹で、「油」「動物性タンパク質」「旨味(出汁)」と合わせると、苦味が劇的にマイルドになります。
豚肉の脂や卵のコク、かつお節の旨味を合わせる「ゴーヤチャンプルー」は、理にかなった最高の調理法で、また、油で揚げる「天ぷら」や、ツナとマヨネーズで和える「サラダ」にすると、子供でもスナック感覚で美味しく食べられます。

現代では、夏の節電対策である「緑のカーテン(日よけ)」としても活躍し、環境にも人にも優しい存在として食され、冷房による冷えや冷たいものの食べ過ぎで内臓が弱りがちな現代の夏だからこそ、この大自然のエネルギーが詰まった苦味が体に活力を与えてくれます。



