旬感食 to ナ美

旬感食 to ナ美 Vol.1「里芋」

新米、栗、茸に銀杏、ぶどうや柿、秋刀魚に鮭、などなど、おいしいものが豊富な食欲の秋がやってきます。

そして秋は、芋の季節でもあり、じゃがいも、さつまいも、里芋と、それぞれに種類も豊富で、いろんな芋が店頭を賑わせてくれます。

そんな、季節折々の旬の食材や、季節を感じる料理など、「旬を知る感じる、食べる、そして元気に美しく」をテーマにスタートする「旬感食 to ナ美」の初回は、里芋に注目してみましょう。

 

 

山形県を中心とした東北地方の秋の風物詩として地域の人々に愛される「芋煮会」。

秋の里芋の収穫期に、河川敷などの野外で、里芋、こんにゃく、ねぎ、肉などを大鍋で煮て、大勢の仲間と食べるという楽しい行事で、職場などで恒例行事になっている企業もあるようです。

名称や芋煮に使う材料、味つけは、地域によって異なり、いろいろなものがあるようです。

 

 

里芋は、じゃがいもやさつまいもに比べると地味な存在として扱われがちですが、昔は芋と言えば里芋のことを指していました。

古い歴史を持ち、日本の食文化と関わりの深い伝統野菜の一つで、茶色い縞模様の皮を剥くと、ぬめりがあり、白くなめらかな身が現れ、やわらかくてやさしい味わいに、ねっとりとした食感が特徴です。

 

 

里芋の原産地は、インド東部からインドシナ半島にかけてという説が有力とされ、少なくとも紀元前3000年ごろにはインドで栽培されていたようです。

そこから、原始マライ民族の移動とともに、フィリピン・ミクロネシア・ポリネシア・オーストラリア・ニュージーランドに至る太平洋一帯に広がりました。

現在でも「タロイモ」として利用されており、多くの民族・地域で重要な食材となっています。

日本へは、紀元前に中国から渡来したという説と、南方から太平洋諸民族の渡来により伝えられたという説があります。

渡来時期ははっきりしませんが、稲の渡来(縄文晩期)より古いとされていて、縄文時代に焼き畑農業が行われており、その中心作物が里芋で、里芋は稲作以前の主食だったと考えられています。

日本に定着した里芋は、タロイモ類の中で最も北方の風土に適した系統のものと言われています。

 

 

「里芋」という名前は、「山芋」に対して、里で作る芋というのが由来とされ、他に、「田芋」、「畑芋」、「家芋」などの呼称があります。

 

お正月のお雑煮には、普通お餅を入れますが、これは私たちの先祖のお米に対する感謝と畏敬の念をハレの膳に表したものだと言われています。

ところが、奈良・京都を中心とした関西地方では、お雑煮にお餅の他に里芋を入れるようで、ハレの膳をお餅とともに里芋で祝うということは、里芋もお餅と同じくらい大切な食材であったということが分かります。

 

そんな、日本人に馴染みの深い里芋を、秋の夜長に美味しくいただいてみてはいかがでしょうか。