日本橋川に架かる「湊橋(みなとばし)」は、1679年(延宝7年)に、当時の通称こんにゃく島とも呼ばれていた霊巌島(現在の中央区新川)と対岸の隅田川の中洲の埋立地(現在の中央区日本橋箱崎町)を結ぶために架橋されました。
1923年(大正12年)の関東大震災で被害を受けますが、復興事業として1928年(昭和3年)に三連のアーチが美しい橋に再建され、その後、1989年(平成元年)の整備事業で架橋当時の賑わいを示す象徴として、「千石船」のレリーフが2本の橋脚の上流・下流側に造られ現在の姿になっています。
湊橋は、文学作品にも取り上げられ、藤沢周平「狐剣 用心棒日月抄」、池波正太郎「剣客商売十三 波紋」などに登場しています。

橋の周辺は、江戸時代から水路交通の要所として栄え、とくに江戸と関西を結んで樽廻船によって酒樽が輸送されていました。
「江戸名所図会」によるとこの橋は、当時の湊町を形成した日本橋川河口の繁栄を象徴しており、また橋をはさんだ川岸には倉庫が建ち並び、当時の賑わいが偲ばれ、橋名の由来については、江戸湊の出入口にあったことから名付けられたと云われています。

豊海橋
湊橋の下流には、日本橋川の第一橋梁として架かる梯子を横にしたような独特のデザインの「豊海橋(Vol.17で紹介)」を見ることができる。
この梯子を横にしたような独特な構造を採用したのは、近くの「永代橋(Vol.7で紹介)」との景観上のバランスを保つためと云われ、重量感のある鉄骨橋梁の代表例としても貴重で、中央区民有形文化財に指定されていて、夜には淡いオレンジ色にライトアップされ、隠れた夜景スポットでもあり、たびたびドラマの撮影にも使われている。

東京シティエアターミナル
湊橋を東へ5分ほど歩いた首都高速箱崎JCT下にある東京シティエアターミナルは、「T-CAT(ティーキャット)」の愛称で親しまれていて、成田・羽田空港と東京・日本橋をリムジンバスでつなぐ、東京観光のスタート地点として知られています。
T-CATは、徒歩圏内に東京メトロ日比谷線「人形町」、都営浅草線「人形町」駅、そして、東京メトロ半蔵門線「水天宮前」駅と直結するなど、3路線2駅の利用が可能で、東京観光の起点にもなっています。
今なお進化を続ける伝統の街・日本橋からほど近く、T-CAT周辺には多くのホテルが点在しているので、人混みを歩くことなくすぐに荷物をホテルに預けて、身軽に観光ができるのも魅力です。
T-CAT内にも手荷物一時預り所やコインロッカーがあり、到着後すぐに荷物を預けて、徒歩圏内の江戸の風情を感じられる人形町を散策する事もできます。

東京水天宮
T-CATの直ぐ近く、日本橋の蛎殻町に鎮座する「東京水天宮」は、福岡県久留米市の「全国総本宮水天宮」を総本山とし、安産や子授けの御利益があることで知られています。
その歴史は、1185年(寿永4年)の日壇ノ浦の戦いの後、千歳川(現筑後川)の辺り鷺野ヶ原に遁れて来た、安徳天皇の母である高倉平中宮に使えていた女官、按察使局伊勢によって、1190年(建久初年)に初めて水天宮を祀られました。
1818年(文政元年)、第九代藩主有馬頼徳公によって、参勤交代の折に江戸で水天宮を親しくお参りできるように、芝赤羽根橋の上屋敷内へ国元久留米より御分霊が勧請され、それ以来、水天宮は当主と共にあり、1871年(明治4年)に現在の日本橋蛎殻町に御遷座されたのが、現在の東京水天宮です。
江戸鎮座200年記念事業として、約三年をかけて社殿と参集殿の建て替えが行われ、2016年(平成28年)4月に新しい社殿となり、神社建築様式の社殿と現代建築を取り入れた参集殿は、高度な意匠によって融和し、時代に即した神社へと一新され。そして境内地一面には、最新技術の免震構造を取り入れ、待合室の環境改善も行われました。

甘酒横丁
東京メトロ日比谷線「人形町駅」A1出口すぐにある「甘酒横丁」の小路は、明治の昔、今の甘酒横丁入口からちょっと南側の小路に「尾張屋」という甘酒屋あり、その小路を「甘酒屋横丁」と呼んでいたのが、「甘酒横丁」の起源と云われています。
明治の頃、この界隈には水天宮をはじめ、明治座や、末廣、喜扇亭、鈴木亭という寄席が並び、多くの見物客が集まりました。
また、近くには穀物取引所や、築地に移転する前の「日本橋魚河岸」があって、小路の周辺は、東京屈指の繁華街として賑わい、芝居見物に集まった人たちが、尾張屋の縁台で芝居談義をしながら、おいしい甘酒を楽しんでいたのでしょう。
関東大震災後に区画整理があり現在の道幅になりましたが、今でもこの路は「甘酒横丁」と呼ばれ、昔ながらの老舗や名店が並び新しくても、何故かなつかしい、そんな雰囲気のある情緒豊かな下町の散歩道として親しまれています。

日頃、何気なく渡る橋にも、毎日通る道にも、その街の歴史や風情を見に、是非この機会に、いつもの街を少し視点を変えて散策してみてはいかがでしょうか。



