TOKYO BRIDGE WALK

TOKYO BRIDGE WALK Vol.48「新大橋」

隅田川3番目の橋として、元禄6年(1693年)に架橋された「新大橋(しんおおはし)」は、当時「大橋」と呼ばれていた両国橋に続く橋で「新大橋」と名づけられました。

橋が架橋される前の墨田川には、橋が少なく不便を強いられていた江戸町民が多くいて、その不便さを解消するために、江戸幕府5代将軍・徳川綱吉の生母・桂昌院が、架橋を綱吉に勧めたと伝えられています。

橋は現在の位置よりもやや下流側に、西岸の水戸藩御用邸の敷地と、東岸の幕府御用船の係留地をそれぞれ埋め立てて橋詰とされました。

 

 

架橋後の新大橋は、破損、流出、焼落を何度も繰り返し、その回数はなんと20回を超え、幕府財政が窮地に立った享保年間に幕府は橋の維持管理をあきらめます。

廃橋が決まるも町民衆の嘆願により、橋梁維持に伴う諸経費を町方が全て負担することを条件に、延享元年(1744年)には存続が許可され、橋の維持のために橋詰に市場を開いたり、寄付などを集めるほかに、橋が傷まないように「渡る者は橋で休まず渡れ、商人も物乞いもとどまる事を禁ずる、荷車の通行は禁止」の高札が掲げられました。

 

 

明治45年に、アールヌーボー風の高欄に白い花崗岩の親柱など、特色あるデザインのピントラス式の鉄橋として現在の位置で生まれ変り、竣工後間もなく市電が開通しています。

戦後は、修理補強を行いながら使用しますが橋台の沈下がひどく、晩年には大型車の通行が禁止され、4t以下の重量制限が設けられると新橋計画が立てられ、昭和52年に現在の橋に架け替えられました。

旧橋は貴重な建築物として、愛知県犬山市の博物館明治村に全体の8分の1、約25メートルが部分的に移築されて保存されており、平成16年には「明治村隅田川新大橋」の名称で国の登録有形文化財となっています。

 

 

描かれる新大橋

新大橋は、歌川広重が晩年に描いた名所江戸百景の「大はしあたけの夕立」に登場し、日本橋側から対岸を望んだ構図の絵は、ゴッホが影響を受けて模写した事でも知られています

絵が描かれた当時、新大橋の河岸にあった幕府御用船係留場には、史上最大とも言われたの安宅船の「御座船安宅丸(あたけまる)」が、巨体ゆえに係留されたままになっていた事から新大橋付近は「あたけ」と呼ばれていたようです。

また、新大橋の下流で隅田川が中州によって分流する地点は、「汐と水とのわかれ流るゝ所故に」別れの淵と呼ばれ月見の名所として知られ、斎藤月岑の江戸名所図会に「新大橋 三派(みつまた)」として描かれています。

 

 

江東区芭蕉記念館

数々の名句や紀行文を残した松尾芭蕉は、新大橋東岸の深川の芭蕉庵を拠点に活動をしていて、「奥の細道」の壮大なる旅もこの地から始まったことから、深川界隈には芭蕉にまつわる史跡が数多く残されています。

新大橋が望める隅田川のほとりに建つ「江東区芭蕉記念館」は、日本旅のペンクラブが行う「21世紀・芭蕉のみち」認定地として、平成14年に都内で唯一認定されています。

記念館近くの歩道には「旧新大橋跡」の碑が建っていて、最初に架けられた新大橋の近くの深川芭蕉庵に住んでいた芭蕉は、橋が完成していく様子を「初雪やかけかかりたる橋の上」「ありがたやいただいて踏むはしの霜」と、句に詠んでいます。

 

 

明治座

新大橋西岸日本橋浜町に建つ明治座は、明治6年、現在の久松警察署の南側に劇場が立てられ、喜昇座として開場したのが始まりで、急ごしらえの劇場であった喜昇座は、明治12年に大歌舞伎ができる豪華な大劇場へと一大改築が行われ、劇場名を久松座と改めて開場されました。

しかし、その後の久松座には火事や暴風雨、コレラの流行により休場など、連続して災難が起きると、明治18年には新たな座長を迎え、久松座は千歳座と改称して新築開場することになり、こけら落しは興行は、市川團十郎、尾上菊五郎、市川左團次をはじめとする第一級の役者が勢ぞろいて行われました。

明治23年、またも運悪く火事で千歳座は焼落してしまいますが、明治の劇聖のひとりと称せられる初代市川左團次が再建に乗り出し、明治26年、新しい洋風の劇場は明治座と改称され、こけら落しは大入り満員で開場しました。

市川團十郎が出演した明治29年9月の興行では、25日間大入り満員でそば札を大入り袋に入れて配れ、これが、今日の大入袋の始まりとも言われています。

明治座の脇には、出演者やファンの人達が演目の成功を祈って手を合わせる神社として知られ、商売繁盛のご利益がある「笠間稲荷神社明治座分社」が鎮座しています

 

 

東京水上散歩

東京の下町を流れる隅田川には、新大橋始め多くの歴史ある橋が架かっていて、歩いて渡るのも楽しいですが、その全貌を見る事ができる水上バスでの水上散歩もおすすめです。

水上から、それぞれの橋を見比べてみると、架けられた年代で異なるデザインを楽しめ、橋の下をくぐるときは迫力ある圧巻の風景を見ることができます。

浅草とお台場を結ぶルートをはじめ様々なルートあり水上からの景色とそよ風と水しぶきを体感でき地上とはひと味違った東京の風景を楽しむことができるので、水の流れにまかせて、ゆったりと散策を楽しみましょう。

 

 

日頃、何気なく渡る橋にも、毎日通る道にも、その街の歴史や風情が残っています。是非この機会に、いつもの街を少し視点を変えて散策してみてはいかがでしょうか。