ワイン de トリップ

ワイン de トリップ Vol.6「フランス:リヨン」

パリから南東に450kmほどのところに位置するリヨンは、ワイナリー巡りのハブ拠点であり「美食の街」「絹の街」「金融の街」「ハイテクの街」と様々な顔を持つ、人口約165万人のフランス第2の都市である。  

北から流れ込むソーヌ川と、北東から流れ込むローヌ川に挟まれた街は、中心となる市庁舎とリヨン・オペラ座の間にあるコメディ広場から、南はベルクール広場までのレピュブリック通り界隈が、リヨン一の繁華街として賑わっている。 

ソーヌ川の西側には、ビューリヨンと呼ばれる石畳の古い街並みが残る旧市街と、リヨンを象徴する建造物の一つでもある、フルヴィエール大聖堂の建つフルヴィエールの丘がある。 

ローヌ川の東側は、クレディリヨネタワーを筆頭に近代的な建物が建ち並ぶ地域で、そのさらに東に、新興の住宅地が拡がっている。  

 

リヨンの歴史的地区  

紀元前1世紀に「三つのガリア」の首府としてローマ人によって築かれたリヨンは、その長い歴史を通じて、ヨーロッパの政治、経済、文化の発展に多大な役割を果たしてきた。  

この街が歩んできた歴史は、各時代の豊富な歴史的建造物と都市空間が教えてくれる。  

当時の趣を残す石畳のリヨン旧市街から、クロワ・ルースにかけての地区は、文化伝統を結集させた独自の建築群と都市美が評価され、ユネスコの世界文化遺産に登録されている。 

12~15世紀にかけて造られたサン・ジャン教会付近が、石畳の道が入り組んだ旧市街で、車が通れないような細い道が多く、建物の回廊や中庭を伝って他の道へ抜けるトラブール(抜け道)も張り巡らされている。  

トラブールはリヨン独特のもので、もともとは織物業者が品物を雨に濡らさないように使われていたと言われているが、今では、この抜け道を探し、散策して楽しむ多くの観光客の姿を見ることができる。  

  

絹の街、金融の街は、映画の街  

1436年、ルイ11世の時代に、年4回の自由市を開催する特恵を授けたことが契機となって、リヨンで絹織物工業が発展を始め、かつては、日本からカイコを輸入していた時代もあり、こうしたリヨンの絹織物の歴史は、織物歴史博物館などで知ることができる。 

絹織産業で栄えたリヨンの面影を残すクロワ・ルース地区にあるカニュ博物館は、現在でもジャカード織など実際に製作している工房で、職人が織り機を使って実際に織物を織りながら絹織物の歴史などを教えてくれる。  

1907年、小説家の永井荷風が、横浜正金銀行の社員時代に滞在していたこともあるリヨンは、古代ローマ帝国のガリア属州の植民市ルグドゥヌム(神の丘)として栄えた物資の集散地であった。  

中世には市の立つ町としてヨーロッパでも有数の交易地として繁栄し、中世からヨーロッパ各地の手形交換所として機能してきた。  

荷風の滞在していた当時、すでに大金融都市として栄えていた街は、現在でもフランスにおける金融センターのひとつであり、多くのフランスの銀行の本店が置かれいる。  

そんなリヨン出身で、「映画の父」として知られるリュミエール兄弟が、世界初の実写映画と言われる「工場の出口」をリヨンで撮影された事から、映画発祥の地としても伝えられている街リヨンには、多くの魅力が詰まっている。  

  

フルヴィエールの丘  

リヨンの町を見下ろすフルヴィエールの丘の上にそびえるフルヴィエール大聖堂は、19世紀末に、建築家ピエール・ボッサンによって設計され、リヨン市民の寄付によって建てられた聖母アリアに捧げられた建物で、礼拝堂の最上部には金色に輝く聖母マリアの像がリヨンの街を見守るように立っている。  

八角形の4つの塔を配したバジリカ式大聖堂は、当時としては珍しい様式で、ビザンチン様式を取り入れた華やかで豪奢な内部とは対照的に、外部は建物の巨大さに反し質素な造りが、ある種の象徴性を感じさせ、人々を暗闇から光のもとへといざなってくれる。  

白い外観の建物は、夜になるとライトアップされ、リヨンの街のどこからでも見ることができる。 

大聖堂から南西へ下ったところには、紀元前15年に築かれた古代ローマ劇場がある。  

この円形劇場は、ガリア最古の劇場で観客席1万人の規模を誇るフランス最大の古代ローマの繁栄を現在に伝える劇場と言われている。  

現在でも、現役の劇場として使われていて、毎年夏になると、ここでは「フルヴィエールの夜」というイベントが開かれ、コンサートや演劇が上演されている。  

フルヴィエールの丘の上から観ると、リヨンの街の構造がよくわかるので、現地に出向いた際には、ぜひ一度登ってみることをお勧めする。  

リヨンの街には、ここでは伝えきれない長い歴史と、そこで生活する人々が創り出す、多くの物語を楽しめるスポットが満載なので、是非一度、旅してみてはいかがだろうか。