カスティーヤ・ラ・マンチャはイベリア半島の中心からやや南に位置し、スペインを代表する作家ミゲル・デ・セルバンテス作「才知あふれる郷士ドン・キホーテ・デ・ラ・マンチャ」の主人公ドン・キホーテが行う、数々の冒険の舞台となった場所として世界的に知られている。
風車が特徴のコンスエグラ
「ラ・マンチャ」とはアラビア語で「乾いた土地」を意味しており、その名を最も強く感じる事の出来る場所として有名なのがコンスエグラだ。
9基の風車と古城が丘の上に建ち、地域一帯には乾燥した大地が広がり、バルセロナやマドリードといった大都会にはない、のんびりとした時間の流れをラ・マンチャでは楽しむことができる。
古都トレドのアルカサル
スペインの首都マドリードから南へ車で1時間ほどの所に位置するラ・マンチャの州都トレド。
町で最も高い丘(標高548m)の上に建つ立つ長方形の建物こそがアルカサルである。
元はローマ帝国時代の宮殿があった場所に、11世紀にアルフォンソ6世が、イスラムの支配からトレドを奪還して要塞に改築され、後に皇帝カルロス5世が帝王にふさわしい邸宅を建てるよう命じて改築させたものが現在の原型となっている。
スペイン内戦中の1936年に共和国軍の包囲戦によって破壊されてしまうが、1961年に再建され、東のファサードが中世、西がルネサンス様式、北がプラテレスコ様式、南がチュリゲーラ様式と、それぞれ異なった様式と時代からなる見事な景観は訪れる人々を魅了する。
現在は、古代ローマや中世の大砲や銃、軍服、旗、模型などが展示された軍事博物館となっている。
デノミナシオン・デ・オリヘン
スペインワインの原産地呼称制度であるデノミナシオン・デ・オリヘン(DO)では原産地呼称(DO)に指定されているラ・マンチャは、世界最大級のブドウの産地としても知られる。
中世以前のラ・マンチャは、家畜の放牧と穀物の栽培は盛んであったて、ブドウ栽培は農地全体の8%ほどしかなく、当時は地元で消費されるテーブルワインが主に造られていたようだ。
19世紀後半、スペイン国内の鉄道路線の開通により、流通網が拡大したことでブドウ栽培も盛んになり、1880年代半ばにはスペイン最大規模のブドウの産地になったと言われている。
今日のラ・マンチャは、スペイン産テーブルワインの45%を賄う葡萄畑に加えて、ワインの種類は多彩で、質の良いものが大量に生産されている。
また近代的な工場群も多く、タラベラ・デ・ラ・レイナとプエンテ・デル・アルソビスポの陶器、アルバセテの金属刃物類、シウダ・レアルのレース刺繍といった工芸品でも有名である。
ユニークな伝統料理
ラ・マンチャ料理を代表する一つにガスパチョがある。
聞いた事がある料理に思われるが、同名で有名なのはアンダルシアで知られる冷静トマトスープのガスパチョであり、ラ・マンチャのガスパチョは別もである。
もともとは羊飼いの人達が、野鳥の肉と薄くして焼いたパン(トルタ・デ・ガスパチョ)を一緒に煮込んで作った物で、ラ・マンチャの冬の家庭料理として知られている。
また、イスラムがもたらしたとされる野菜を煮込んだビスト・マンチェゴやローストした赤ビーマンとガーリック風味のアホ・アリエロが魚や肉料理のつけ合わせによく出され、山兎、ガーリック、オニオン、ピーマンをオリーブ油で一緒に調理したトフントなども伝統料理の一つである。
スペインを代表するワインの産地で歴史的建造物と独創的料理を堪能する旅を、この機会に一度計画してみてはいかがだろうか。