旬感食 to ナ美

旬感食 to ナ美 Vol.43「アサリ」

食用として重要な貝の一つで二枚貝の一種のアサリは、日本ではヒメアサリもアサリと呼ぶ場合が多く、日本の俳句文化においては「三春」の季語として知られています。

汽水状態を好み、成貝は海岸の潮間帯から干潮線下10m程までの浅くて塩分の薄い砂あるいは砂泥底に生息していて、日本の北海道から九州までの沿岸部、朝鮮半島、台湾、フィリピンまで広く分布しています。

 

 

日本人にとってもっとも親しみのある貝「あさり」は、石器時代の貝塚から出土するほど、古来から食べられている食材で、江戸時代になると、江戸前に住む庶民にとっての娯楽の一つが「潮干狩り」とも言われています。

 

 

潮干狩り

春の季語としても使われる「潮干狩り」は、3月中旬から各地でシーズンを迎え、干潮前後の遠浅の海岸は、アサリやハマグリ、マテ貝などを探しにバケツと熊手を持った多くの家族連れで賑わいます。

貝を効率良く掘る方法は、二枚貝は水管を使って呼吸をするので、例えばアサリは呼吸のために砂の中から入水管と吸水管を出していて「アサリの目」と呼ばれる小さな穴を見つけたら、そこが居場所の目安となります。

また、マテ貝を掘るには独特の方法があり、大きいスコップやシャベルで砂を掘り、潮が吹いている小さな穴を見つけたら、そこに食塩を一摘み入れるとマテ貝がニュッと飛び出してきます。

これは穴の中で水管などを露出し呼吸しているマテ貝が高濃度の塩分に驚き、貝柱を急激に収縮させる習性を利用したもので、わざわざ砂泥を掘らずに採れるユニークな方法として知られています。

 

 

深川めし

東京下町の江東区深川周辺の郷土料理で知られる「深川めし」は、アサリなどの貝類と長ネギを煮込み、ご飯にかけた「ぶっかけ」や、味噌や醤油で炊き込んだ「炊き込み」の2種類があり、また、ご飯にかけない「深川鍋」もあります。

江戸時代、江東区永代、佐賀あたりの南方に流れる大横川の一部は深川浦と呼ばれ、潮が引くと砂州が広がり、アサリやハマグリ、アオヤギが豊富に獲れる漁師町として知られ、当時は「ぬきみ」といって殻からはずした身だけを売っていた事から、「ぬきみ」を使った「炊き込みご飯」が生まれ、その炊き込みご飯を温かく食べるために熱い汁をかけて食べる汁かけ飯が江戸の食べ方として定着したと云われています。

新鮮な生アサリ、粗く刻んだネギのうまみが味噌と相まって、このエキスがご飯に染み渡る、現代にも残る江戸情緒を感じる伝統食です。

 

 

豊富な栄養素

アサリに含まれる栄養成分には、たんぱく質、鉄分、亜鉛、カリウム、カルシウム、ビタミンB12、タウリンなどがあり、筋肉や皮膚を作るたんぱく質は、酵素やホルモンの材料にもなるなど、糖質や脂質と並んで生きていくためには不可欠な栄養素です。

血液中に含まれる赤血球の成分となる鉄分は、日本人が不足しやすい栄養素といわれていますが、あさりにはその鉄分も豊富に含まれています。

また、身体の発育や生命維持、そして味覚や免疫反応などにも幅広く関わっている重要な栄養素の亜鉛や、高血圧を予防するカリウム、骨や歯を強くするカルシウム、血液を作るビタミンB12、コレステロールを下げるタウリンなど、私たちの身体に必要な栄養素をアサリから摂取する事ができます。

 

 

豊富な栄養を美味しくいただくには、定番の酒蒸しや味噌汁はもちろん、パスタやパエリアといった洋風料理まで、アサリの風味を活かしたメニューは豊富にあります。

貝類の調理は砂抜きが苦手という方は、500㎖の空のペットボトルを用意して、500㎖の水にキャップ2杯(約15g)の塩を加えるだけで、簡単に海水の塩分濃度に近い塩水を作る事ができるので、アサリの調理は初心者という方も、この機会にチャレンジしてみてはいかがでしょうか。