果糖とクエン酸がもととなり、上品な甘みとやわらかな酸味で親しまれるイチジクは、乾燥したものは生薬に使われており、女性にはうれしい整腸と美肌効果もあると言われています。
イチジクは漢字で「無花果」と書きますが、花がないわけではなく、イチジクは実の中に小さな花をつけるため、外側からは花が見えないことから「無花果」という漢字が当てられたと言われています。
イチジクの実は厳密には果実ではなく、花にあたる部分なのです。
イチジクは「隠頭花序(イントウカジョ)」と呼ばれる花を付ける木で、果実のように見える部分は、花軸が肥大化したもので、切った時につぶつぶのように見えるのが花で、この花の部分によって独特な食感が生み出されているのです。

歴史ある果物
アラビア半島が原産とされるイチジクは、古代エジプトの壁画にも描かれており、さらには旧約聖書にも数多く登場し、あのアダムとイブの話の中に「禁断の果実」として出てくる歴史ある果物です。
アラビア半島で誕生し、少なくとも6000年前には栽培が始まっていたと言われています。
その後ヨーロッパからペルシャへ、そして中国へと伝わり、江戸時代に中国から長崎に運ばれ日本に伝わったと言われています。
当初は薬用として栽培されていたようですが、生産量が増えるにつれて食用としても親しまれるようになりました。

名前の由来
イチジクという名前の由来は、毎日1つずつ熟すことから「一熟」になったという説や、一ヶ月で実が熟すため「一熟」という説に、中国名「映日果(エイジツカ)」がなまってイチジクとなったという説もあります。
また、呼び名としては「南蛮柿(ナンバンガキ)」「唐柿(トウガキ)」と呼ばれることもあります。

多くの品種に驚き
国内で流通しているイチジクの約8割は「桝井ドーフィン」という品種です。
その他「蓬莱柿(ホウライシ)」や「とよみつひめ」、「ビオレ・ソリエス」などがあります。
近年では、「バナーネ」や「キング」「コナドリア」など海外の白イチジク品種の栽培も増えてきています。
営農栽培され市場に流通している主なもの以外にも、家庭菜園用にさまざまな品種が出回っていて、海外も含めるとイチジクの品種はおびただしい数があり、海外のサイトを参考までに調べてみると多くの品種に驚きます。

福岡県のオリジナルブランド
福岡県が開発したオリジナル品種「とよみつひめ」は、平均糖度は17度以上になるメロンを思わせる甘味があり、皮ごと食べられるイチジクと言われています。
福岡県農業総合試験場豊前分場でそれまでに育成してきた品種同士を交配して誕生した「とよみつひめ」は、2004年に登録出願され、2006年8月に品種登録されています。
品種名は、行橋市豊前町の「豊(とよ)」と甘いの「蜜(みつ)」から命名されたと言われています。
栽培は、福岡県が開発したオリジナル品種ということで、許諾契約を結んだ福岡県内生産者および生産団体に限られていて、デビュー以来、甘いイチジクとして広く知られるようになりました。

美味しいイチジクは、果皮にハリと弾力があり、傷が無くふっくらとした形で、全体がエンジ色がかって、おしりの開いているものが完熟の目印です。
イチジクに含まれるペクチンなどの食物繊維は、腸内環境の改善やコレステロール低下に役立ち、フィシンという酵素がタンパク質を分解してくれるので、食後のデザートにぴったりです。



