旬感食 to ナ美

旬感食 to ナ美 Vol.15「かぶ」

春の七草の一つ「すずな」として知られる「かぶ」は、「大根(すずしろ)」とともに昔から日本になじみのある野菜です。

一般的なかぶは、小ぶりの白い球型をしていますが、赤や黄、紫色など、さまざまな色や形、大きさの品種があり、地域に根差す在来種が多いのも特徴で、その数は80種とも言われます。

かぶは、品種によって多少の違いはありますが、基本的に晩秋から冬が旬の野菜と言われていて、寒くなると甘味が増しておいしさもアップします。

かぶの葉は根の部分よりも栄養豊富なので、捨てずに調理して食べましょう。

 

 

その歴史は古く

原産地には諸説ありますが、地中海沿岸と西アジアのアフガニスタン地域ではないかと言われています。

中国では約2000年前にすでに食用とされていて、農業の専門書で知られる「斉民要術(せいみんようじゅつ)」には栽培や利用に関する詳細な記述が残っています。

「三国志」で有名な蜀の軍師「諸葛孔明」が遠征の先々で、兵士にかぶの種をまくよう指示してかぶを作らせ、兵糧の助けとしていた事から、かぶのことを「諸葛菜(しょかつさい)」と呼ぶというエピソードが残っています。

なお、日本では「諸葛菜」は「オオアラセイトウ(ムラサキハナナ)」という花の別名として知られています。

日本へは中国を経て、大根よりも古く渡来したとされていて、奈良時代には食べられていたようです。

記録では「日本書紀」の持統天皇の条に栽培を奨励する作物として「蕪」という文字が登場していて、「正倉院文書」に記されている「菁菜」や「万葉集」に出てくる「蕪菁」もかぶのこと指しています。

江戸時代には全国各地でさまざまな種類のかぶが栽培されるようになり、多くの品種が誕生し、現在もこれらの多くが地域野菜として親しまれています。

 

 

そのまま保存はダメ

葉がついたままだと葉に水分を奪われるので、すぐに葉と根を切り落として別々に保存しましょう。

根の部分は新聞紙で包むかポリ袋に入れるなどして冷蔵庫の野菜室へ、5日くらいを目安に使い切りましょう。

葉は水分を逃がさないようラップで包むかポリ袋に入れて、冷蔵庫の野菜室で保存しますが、葉は日持ちしないので1~2日以内に早めにいただきましょう。

さっと茹でた後、水分を十分に絞ってから小分けしたものを冷凍しておくと、彩りとして使えて便利です。

 

 

かぶは生でも、みずみずしくて美味しいですし、漬けたり、焼いたり、煮たりすると、食感や甘味も変化して、違った味が楽しめます。

葉は、アクが少なく使いやすいので、浅漬けや煮びたし、炒めものなどにもおすすめです。

カリウムやビタミンC、食物繊維、デンプンを分解する消化酵素のジアスターゼなどが含まれる「かぶ」は、生で食べると消化酵素を効率的に摂取できると言われていて、胃もたれや胸やけの解消に良いそうです。