ワイン de トリップ

ワイン de トリップ Vol.62「オランダ:マーストリヒト」

日本ではとても珍しいオランダワインですが、その歴史は古くブドウ栽培は968年に遡り、古代ローマ時代からワイン造りが行われていましたが、寒冷期の影響で一時衰退しています。

近代的なワイン生産は1970年代に再開され、現在では国内に約130の商業ワイナリーがありますが、その生産量は極わずかで、ほとんどが国内消費用として飲まれています。

国を代表する最古のワイナリーとして知られるアポステルホーフェのワインは、現在もオランダ王室や海外の皇族、大統領の迎賓用ワインとして使用される高品質ワインを生産し高い人気を誇っています。

オランダではドイツ系品種が多く栽培され、代表的な品種にはレゲント、カヴェルネ・カントル、ピノティンなどがあり、近年は病害抵抗性の「PIWI品種」を用いた自然派ワインも注目されています。

オランダ南部、特にリンブルフ州やマーストリヒト周辺が主要なワイン生産地として知られ、イェーカー渓谷などの国境地帯でブドウが栽培され、国内外で高い評価を受けています。

 

 

マーストリヒト

オランダの首都アムステルダムから南へ220㎞ほどの所に位置するマーストリヒトは、1992年2月に調印された欧州連合条約、通称「マーストリヒト条約」で一躍世界的に有名になった町で、ドイツとベルギーの国境に接し、マース川河畔に開けていることから過去には多数の国の侵略を受けました。

長い間フランス、スペイン、ベルギーなどの占領下に置かれ、1632年のオランダ独立戦争以来、マーストリヒトはオランダ領となり、町には当時を偲ばせる市壁や城壁、大砲の跡が多く残っています。

マーストリヒトは、ヨーロッパの美しい街並みと石畳の小道、そして歴史あふれる建造物の数々が観光客に人気で、13世紀建造のオランダ最古の橋とされる「聖セルファース橋」に、1229年に建造され、街で唯一残っている門である地獄門、700年以上も前にドミニコ会修道院の教会として建てられ、改装後に世界で最も美しい本屋さんにも選ばれた事もあるブックハンデル・ドミニカンなど、いくつもの見所があります。

 

 

マーストリヒト周辺では、歴史あるワインカーブでのテイスティングやガイドツアーも楽しめ、観光と合わせて希少で高品質なオランダワインを体験することも可能です。

 

 

ボンネファンテン美術館

マーストリヒトの活気あふれる中心部に建つボンネファンテン美術館は、周辺で発掘された考古学的遺物の展示の他、ブリューゲルやルーベンスなど16~18世紀のヨーロッパを代表する画家達の作品に、現代アートの素晴らしいコレクションまでが鑑賞できます。

ロケットのような印象的な塔は、多くのプロジェクトを世界中で抱えたまま事故により、66年の生涯を突然閉じることになった「たまたま建築家になった詩人」イタリアのアルド・ロッシの設計により1995年に建てられました。

マース川に面した時代の融合を感じさせる印象的な塔をもつ特徴ある美術館は、単なる芸術の収蔵庫ではなく、一つの「体験」であり、時代、様式、そして視点が織りなす、緻密に構成された対話を創り出します。

1884年、地方の歴史的コレクションとして産声を上げた美術館は、歴史的な傑作と現代のマスターピースを共に扱う先駆的な拠点へと進化を遂げ、その歩みは、マーストリヒトの豊かな文化的遺産と、ダイナミックな芸術的対話を育もうとする美術館の情熱の証となり、アルド・ロッシによって設計された建築そのものも、この物語に欠かせない大切な要素となっています。

 

 

聖セルファース教会

マーストリヒト旧市街の中心部のフレイトホフ広場に建つ聖セルファース教会は、ローマ帝国の内戦が激しかった4世紀末にマーストリヒトの最初の司教セルファースが亡くなり、埋葬された場所に木造の小さな礼拝堂が建てられたのが始まりと伝えられています。

アルメニア出身の伝道師であったセルファースは、トンゲレン(現在のベルギー)の司教の後継者とされていましたが、ゲルマン人に追われてマーストリヒトに居をかまえ、マーストリヒトで最初の司教となりました。

木造の礼拝堂は、570年頃に石造で建て替えから7世紀には拡張されて巡礼教会となり、11~15世紀にかけてロマネスク様式のツインタワーと大きな礼拝堂が印象的な教会として建設されました。

内部には宝物殿があり、黄金に輝く聖セルファティウスの胸像、聖骨箱や古い聖職用具などが拝観でき、地下墓地にはセルファースが眠る墓があります。

19世紀末から20世紀初頭にかけての修復では、数多くの教会の設計や修復に関わったオランダの建築家、ピエール・カイパースが監督をしています。

 

 

この機会に、マーストリヒトの豊かな文化遺産に触れながら、希少価値の高いオランダワインを堪能する、旅の計画を立ててみてはいかがでしょうか。