ハンガリーは、中央ヨーロッパ最大の都市と言われるブダペストを首都に持ち、5世紀には葡萄畑が既に存在した記録が残る歴史的なワインの名産国です。
数ある産地の中でもトカイ地方は、フランスのソーテルヌ、ドイツのフランケン地方のトロッケンベーレンアウスレーゼと並ぶ、世界三大貴腐ワインとして名高いワインの産地です。
ハンガリー北東部のボルショド・アバウーイ・ゼムプレーン県のティサ川流域、ボドログ川沿いに位置し、フルミント種主体の甘口の白ワインが造られるトカイ地方の一帯は、2002年にそのブドウ畑の文化的景観がユネスコの世界遺産に登録されました。
首都ブダペスト
ドナウ川を挟んで王宮のある西岸のブダと東岸の商業の街ペストが、1873年にひとつに結ばれブダペストとなりました。
1987年、その美しい街並みは世界遺産に登録され、さらに2002年には歴史的な建物が並ぶアンドラーシ通りが追加登録されると、その景観は「ドナウの真珠」や「東欧のパリ」と称えられ多くの観光客を楽しませてくれます。
街のシンボル、ブダの丘に建つ王宮は13世紀以降、ハンガリー王の居城となり、ネオ・バロック様式のその姿を今に誇り、王宮と同時に建てられたモザイク屋根が特徴のマーチャーシュ教会は、歴代国王の戴冠式が行われた場所です。
王宮を守るドナウの漁師たちにちなみ名付けられた漁夫の砦からは、ドナウ川と対岸のペストの街並みが眼下に広がる、まさに「ドナウの真珠」の見事な景観を楽しむことができます。
英雄広場
アンドラーシ通りの突き当たりに位置する英雄広場は、ヴァーロシュリゲットの中にあり、広場の左側にはブダペスト西洋美術館が、右側にはブダペスト現代美術館が建っています。
広場中央には聖イシュトヴァーンの王冠と大主教十字を握っているガブリエルを戴く柱があり、左右七つずつの像の建つ場所には、建設当初、九部族の英雄の像を右から造られ、当時はオーストリア=ハンガリー帝国であった事から、残りの五つはハプスブルク朝の人々の像が建てられました。
しかし、第二次世界大戦で像が被害を受けると、ハプスブルク朝の人々の像は現在の像に造り変えられました。
ディオーシュジュール城
ブダペストから電車に乗って2時間半ほどのトカイの手前の街ミシュコルツ。
その西に建つ古城「ディオーシュジュール城」は、9世紀、マジャル人がこの地に移動してきた際に築かれた砦が起源とされ、13世紀にモンゴルの攻撃を受けて破壊されますが、石積みの砦が再建され、14世紀にラヨシュ1世大王の手により、方形の4つの塔を持つゴシック様式の城として建築されました。
16世紀にオスマン帝国によって征服されると、徐々に城は荒廃していき、17世紀後半、オスマン帝国の撤退後にハプスブルク家とハンガリー貴族の対立が深まると、この地域は反ハプスブルク貴族の重要拠点となり、彼らは劣勢に陥ると自らこの城を破壊したとされています。
2012年より始った城の修復作業は、大きなダメージを受けていた中央部分を中心に復元され、騎士館やチャペル、中庭などが往年の姿を取り戻しました。
独特の気候が産み出すワイン
2つの川が合流するトカイ地方は、秋から冬にかけての朝に濃い霧が発生し、この霧が丘の上まで昇り、やがてブドウ畑全体を包み込むと、霧による湿気によって貴腐菌というカビに侵された白ブドウが誕生します。
貴腐菌がブドウの水分を外に出し糖分を濃縮させることで、とても甘いブドウになり、このブドウを使うことで極上の甘口のワインが生まれます。
この機会に、世界遺産に登録された街ブダペストの歴史を感じ、そして、世界最高峰の貴腐ワインを探す旅を、計画してみてはいかがでしょうか。