スペイン北東部の地中海沿いに位置するカタルーニャ州は、人口約750万人。
交通の要衝として古代から栄え、中世にはアラゴン連合王国として地中海の覇権を握った独自の歴史・伝統・習慣を持っている。
あふれる太陽と紺碧の地中海
ピレネー山脈でフランスとの国境に接し、一年を通じて暮らしやすい温暖な地中海性気候に恵まれ、独自の文化を育んできた街は、歴史的なゴシック地区や歩行者専用のランブラス通り、ガウディ、ピカソら芸術家たちが美しい街並みに足跡を残している。
海岸部のコスタブラバをはじめとした活気あふれるビーチリゾートは、降り注ぐ太陽で街がオレンジ色に輝き、目の前の地中海から揚がる新鮮な魚介類とお米を使って作るパエリアが有名だ。
沖合には、マヨルカ、イビサといったリゾートの島が浮かぶ。
スペイン第二の都市
カタルーニャ州最大の都市バルセロナは、マドリードに次ぐ金融と重工業の先進都市。
観光、製薬業界、車メーカーなども盛んで、スペイン国内生産の約20%を占め、碁盤の目のような整然とした街には天才建築家ガウディの作品が彩る。
代表作の一つサグラダ・ファミリアは、74歳で不慮の死を遂げた後も工事は進行中で、建築開始から130年以上たった今も未完成でいる。
メインストリートの一つグラシア通りには、世界遺産の「カサ・ミラ」「カサ・バトリョ」といったガウディ作品が建ち並び、歩道にはガウディがデザインしたユニークで美しいタイル「パノ」が敷きつめられている。
通りは、世界的デザイナーの有名ブランド旗艦店やお洒落なカフェも連なり、歴史的建造物を観ながらショッピングを楽しむ人で何時も賑わっている。
世界遺産、バル・デ・ボイ
12世紀に席巻したロマネスク様式の教会群が、ピレネー山脈のボイ渓谷の各村には、今でも多く残されており「バル・デ・ボイのカタルーニャ風ロマネスク様式教会群」として、9つの教会が2000年に世界遺産に登録された。
ボイ渓谷は、11~14世紀にかけて、銀の生産によって繁栄した地域で、そこで得た巨額の富を元に、当時の最先端建築様式であったロマネスク式をロンバルディアから持ち込み、9つの教会は建造された。
その一つのサン・クレメンテ教会は、雄大な山々の前に建ち、素朴な外観は、大自然に溶け込み素晴らしい景観を生みだしている。
主祭壇に描かれた「全能者キリスト」の壁画は、ロマネスク様式の壁画を代表するフレスコ画で、1920年に保存のために壁画は外され、現在の壁画は複製で、本物はバルセロナのカタルーニャ美術館に保管せれている。
急な斜面に建造されたサン・ジョアン教会の横には大きな岩があり、その岩の頂上まで登ってみると、教会の鐘楼の頂上と同じ高さで街を眺めることができ、夜にはライトアップもされるので、日中とは違う幻想的な景観が楽しまる。
世界が驚く独創的な料理
変化に富んだ風土が生みだす豊富な食材と、多くの民俗と交流してきた歴史から生れた料理法は、オリーブオイルを使った地中海料理と、ラードを使ったスペイン田舎料理の双方の要素を併せ持つ独創的な料理が生まれる。
カタルーニャを代表する料理人の一人で、フェラン・アドリア氏がオーナーシェフを務めていたレストラン「エル・ブジ」は、1997年にミシュランガイドで三ツ星を獲得し、イギリスの雑誌「レストラン」において5度の世界一のレストランにも選ばれている。
2011年に惜しまれながらも閉店するまで、フェラン・アドリア氏の独創的な料理は、世界の料理界を驚かせてきた。
そんな魅力的な料理のある街には、美味しいワインが勿論ある。
スパークリングワインのカバ
ローマ時代からヨーロッパにおけるワインの一大産地であったカタルーニャ。
バルセロナ近郊のペネデス地域でワイン生産の長い伝統を持つラベントス家。
ホセ・ラベントス氏は、1860年代にヨーロッパを旅する中で、フランスのシャンパーニュ地方で学んだ技術を活かして、1872年にシャンパン同様の製造方法を用いてスパークリングワインのカバの生産に成功した。
当初カバは、チャンパンもしくはチャンパニーと呼ばれていたようだが、欧州連合がシャンパーニュを保護地理的表示の対象としたことで、それらの呼称を用いることが禁止された。
カタルーニャ語でワインセラーを意味するカバが新たな呼称として定められた。
スペインを代表するワインの産地で歴史的建造物と独創的料理を堪能する旅を、是非、この機会に計画してみてはいかがだろうか。