多摩川の下流域に架かる「大師橋(だいしばし)」は、東京都大田区と神奈川県川崎市を結ぶ、東京都道・神奈川県道6号線、通称「産業道路」の通る主要な橋で、京浜工業地帯や羽田空港周辺を結ぶ物流・交通の大動脈として重要な役割を果たしています。
名称は、橋の南西に位置する初詣の名所「川崎大師」に近接していることに由来し、初代の橋は1939年(昭和14年)にゲルバー式トラス橋として完成しましたが、慢性的な渋滞や老朽化に伴い1991年(平成3年)から架け替え工事が始まり、現在の橋は、2基の主塔から斜めに張ったケーブルで橋桁を支える美しい「斜張橋(しゃちょうきょう)」という構造が採用され、2006年(平成18年)に全面開通しています。
その近未来的でスタイリッシュな白い外観は、地域のシンボルとして広く親しまれ、また、橋の上は遮るものが少なく、天気の良い日には美しく昇る日の出や、冬場には大師橋の後方に沈む夕日に、遠くの富士山も一望でき、夜間にはライトアップされることもあって、周辺の工場夜景や首都高速の灯りと相まって、幻想的な景色を楽しめるビュースポットとしても人気です。

川崎大師
橋名の由来となった「川崎大使」は、大師橋南岸の神奈川県川崎市にある真言宗智山派の大本山で、正式名称を「金剛山金乗院平間寺」と言い、平安時代の1128年に建立され、成田山新勝寺、高尾山薬王院と並ぶ「関東三山」の一つに数えられます。
古くから「厄除けのお大師さま」として庶民の厚い信仰を集めており、毎年お正月には全国トップクラスとなる300万人以上の参拝客が訪れる、初詣の聖地としても全国的に有名です。
御本尊には弘法大師(空海)が祀られていて、厄除けをはじめ、家内安全や開運、商売繁盛など、日々の諸願成就を祈る「お護摩祈祷」が毎日厳かに執り行われています。
広い境内には、重厚な佇まいの大本堂や国内でも珍しい八角形の「八角五重塔」など、数多くの見どころが点在し、また、最寄りの川崎大師駅から続く「仲見世通り」も参拝者の楽しみの一つとなっています。
小気味よい音を響かせる「とんとこ飴」の伝統的な実演販売や、もちもちとした食感が人気の名物「久寿餅(くずもち)」、縁起物の「川崎大師だるま」などを扱う老舗が軒を連ね、門前町ならではの活気ある食べ歩きや買い物が楽しめます。

羽田空港
日本を代表する空の玄関口「羽田空港」は、正式名称は「東京国際空港」で、年間で数千万人以上が利用する、世界トップクラスの利用者数を誇るメガ空港です。
都心から電車やモノレールで約15~20分という抜群のアクセスの良さが最大の強みであり、ビジネスや観光の拠点として24時間体制で稼働しています。
空港内は、国内線中心の「第1」「第2」と、国際線が発着する「第3」の3つの旅客ターミナルで構成されていて、近年は単なる通過点ではなく、旅行者以外も楽しめる「エンターテインメント空間」へと進化を遂げています。
第3ターミナルにある江戸の町並みを再現した「江戸小路(えどこーじ)」や、隣接する大型複合施設「羽田エアポートガーデン」はショッピングやグルメの名所としても有名です。
各ターミナルには開放的な展望デッキが設けられており、ダイナミックな飛行機の離発着はもちろん、夜には滑走路のライトが輝くロマンチックな夜景や、天気が良ければ遠くにそびえる富士山を一望できます。

羽田神社
大師橋の北側に鎮座する、鎌倉時代に創建されたと伝わる「羽田神社」は、羽田全域から羽田空港までを氏子区域に持つ「羽田総鎮守」であり、空港に近い土地柄から、特に航空安全や旅行安全の神様として全国的に広く知られています。
御祭神は「須佐之男命(すさのおのみこと)」と「稲田姫命(いなだひめのみこと)」の夫婦の神様で、「縁結び」や「勝負事」のご利益があり、また、江戸時代に13代将軍・徳川家定が流行病の平癒を祈願して治癒したという故事から、「病気平癒」のパワースポットとしても厚い信仰を集めています。
境内にある、明治初期に富士山の火山岩を使って築かれた高さ約5メートルの「羽田富士」は、大田区の文化財に指定されていて、本物の富士山に登るのと同じご利益があるとされています。
ほかにも、飛行機が描かれたお守りや絵馬、航空会社の就職試験を控えた受験生に人気の「落ちない祈願」など、空港の街ならではの魅力が詰まった神社です。

多摩川大師橋緑地
大師橋の上流域に隣接する広大な都市緑地公園「多摩川大師橋緑地」は、開放的な園内にはスポーツ施設が充実しており、少年野球や軟式野球に対応した野球場(2面)や、土舗装の陸上トラック(1周300m)、多目的に使える芝生広場などが整備されています。
週末には地元のスポーツチームの練習やレクリエーション活動、運動会などで多くの市民に利用されて賑わい、また、見晴らしが抜群な堤防の上や川沿いの小道は、心地よい川風を感じながら散歩やジョギング、サイクリングを楽しめる絶好のコースとして周辺住民に親しまれています。
大師橋より右岸の堤防に添うように並ぶ桜は、一段低い場所に植えられているため、堤防を歩くと目線の高さで桜を眺めながら歩くことができ、春には花見をする人で賑わいます
遮るもののない広い空からは、雄大な多摩川の流れとともに、大師橋や羽田空港へ向かう飛行機、天気の良い日には遠くの富士山を望むことができ、のんびりとリフレッシュできる憩いの場となっています。

日頃、何気なく渡る橋にも、毎日通る道にも、その街の歴史や風情を見に、是非この機会に、いつもの街を少し視点を変えて散策してみてはいかがでしょうか。



