広島を拠点に、作品と場所や空間の関係に特に焦点を当てた企画を展開するタメンタイは、美術史とメディア史の接点から、個人が技術的恩恵を享受することの責任と可能性を問うグループ展「タイムとマシンの平和利用」を、加藤康司、土井紀子、吉田真也、山口達典の4名のアーティスト参加のもと「YUGEN Gallery」にて開催します。
他者の物語について、現代を生きる鑑賞者がいかに接近できるかを問いかける作品を発表してきた加藤康司。
3次元の図像を用いた手法を発展させた出展作は、針の位置を固定したまま時計本体が回転する映像作品を中心に、モノとしての時計と個人史を接続しながら「歴史」の周縁を象徴的になぞります。
層的な構造をもった抽象表現による平面作品を発表してきた土井紀子。
本展出展作は、近年取り組んでいる馬とその影をモチーフとしたアクリル板へのシルクスクリーンプリントを発展させた新作です。
馬の影を空間に投影する本作は、機械と映像メディアの発展による人馬の関係性の変化への示唆を含みます。
土地の歴史や文化、風土などの人々の営みの痕跡を捉えた映像を残してきた吉田真也。
本展出展作は、自身の出身地でもある青森県で制作したもので、六ケ所村に出土した縄文時代の甕棺と使用済み核燃料をめぐる架空のナレーションが、映像や写真に映された風景の過去を重層的に物語ります。
人工知能やロボットとの対話的な関係性を描く作品シリーズを発表してきた山口達典。
本展では、被爆三世の美術家としての自負と責任感に駆られ制作した作品群を出展し、祖父の遺した事物と向き合うことで、祖父の「生」を描写します。
4人のアーティストは、個人史と引き付けて大きな物語を考えようとするアプローチを共有しています。
「平和利用」という表現は、大量殺戮兵器にもエネルギー効率に優れた電力源にもなりうる核のエネルギーを人類はいかに扱いうるかという文脈で、非平和的な帰結をもたらしうるリスクを矮小化するための話術として用いられてきました。
現代日本の社会生活は、このように少なからず他者のリスクを犠牲とした恩恵に支えられている一方で、個人レベルの選択肢は現実的には限られています。
そこで、同様に科学技術の発展によって表現と鑑賞の手段を多様化させた美術の肯定的な「平和利用」を試みるキュレーションを通じて、美術の可能性を考えます。
タイムとマシンの平和利用
開催期間:2024年8月24日(土)~9月2日(月)
開館時間:平日 13:00~19:00/土日祝 13:00〜20:00
※最終日のみ17:00終了 ※会期中無休
会場:YUGEN Gallery
住所:東京都港区南青山3-1-31 KD南青山ビル4F
入場料:無料