旬感食 to ナ美

旬感食 to ナ美 Vol.50「ぎんなん」

秋の味覚を代表するイチョウの木の実「ぎんなん」は、鮮やかな黄葉とともに日本の秋を彩るシンボルとして親しまれる一方、独特の香りと濃厚な味わいを持つ食材として、古くから日本の食文化に深く根付いています。

 

 

イチョウは「生きた化石」とも呼ばれ、恐竜がいたジュラ紀(約2億年前)からその姿を変えずに生き残ってきた、世界に類を見ない一科一属一種の植物です。

イチョウの実は、秋になると熟して地面に落ち、実の構造は大きく分けて3つに分類され、肉質の部分の外種皮は、熟すると黄色くなり、強烈な独特の臭いを放ちます。

硬い殻の内種皮は、白くて硬い「ぎんなんの殻」の部分で、普段「ぎんなん」として食べている部分は「仁(じん)」と呼ばれる胚乳の部分です。

 

 

ぎんなんと日本人の歴史

イチョウ自体は中国が原産とされており、日本には平安時代末期から室町時代にかけて、仏教の伝来とともに僧侶によって持ち込まれたという説が有力で、室町時代の文献にはすでに「銀杏」の文字が登場し、茶の湯の席や精進料理の食材として珍重されていました。

江戸時代になると、一般の庶民の間でも酒の肴や秋の風物詩として広く親しまれるようになり、また、漢方(中医学)の世界では、咳止めや頻尿の改善に効果がある「白果(ばっか)」という生薬として古くから重宝されてきました。

 

 

栄養価と健康効果

ぎんなんは小さな一粒の中に、豊富な栄養素をバランスよく蓄えていて、主成分は「炭水化物(デンプン)」ですが、体内の余分な「塩分(ナトリウム)」を排出し、高血圧の予防やむくみの解消に役立つ「カリウム」や、抗酸化作用を持ち、肌の健康維持や免疫力の向上をサポートする「ビタミンC」も含まれています。

また、脂質や糖質の代謝を助け、エネルギーを生み出すのに必要なビタミン「パントテン酸」や、体内でビタミンAに変換され、粘膜や皮膚を健やかに保ち、風邪の予防に寄与する「β-カロテン」といった、優れた栄養成分が含まれています。

 

 

知っておくべき「ぎんなん中毒」

ぎんなんを美味しく安全に食べるために、絶対に無視できないのが「食べすぎによる中毒」で、ぎんなんには、通称「メトキシピリドキシン」という物質が含まれていて、この物質は、体内で重要な役割を果たす「ビタミンB6」の働きを阻害すると言われています。

ビタミンB6が不足すると、脳内の興奮を抑える神経伝達物質「GABA」が作られなくなり、神経の異常興奮、けいれん、嘔吐、めまいなどの中毒症状を引き起こします。

摂取量の目安は、大人で10粒~20粒程度が目安で、体調や体質によっても異なるため、一度に大量に食べるのは避け、子供は解毒能力が低いため、数粒食べただけで重症化するリスクがある言われているので、与えないほうが良いでしょう。

 

 

ぎんなんは、その強烈なニオイや中毒のリスクから少し敬遠されがちな面もありますが、正しく調理して適量を守れば、秋の訪れを五感で堪能できる至高の味覚です。

今年の秋は、少しの手間をかけて、煎りたての香ばしいぎんなんを味わってみてはいかがでしょうか。