秋の訪れと共に食べる機会も増えてくる煮物や鍋物。
そこに欠かすことのできない食材の一つが椎茸です。
椎茸の栽培方法には「原木栽培」と「菌床栽培」の2種類があり、原木栽培はクヌギやコナラなどの丸太に種菌を植える栽培法で、もう一方の菌床栽培は、おがくずに米ぬかやふすまなどを混ぜて作った培地に植えて育てる方法です。
原木栽培の椎茸は春と秋に多く出回り、春は身の締まった凝縮したうま味を、秋は香り高い味わいを楽しむことができます。
産地と歴史
アジアの熱帯高地が原産地と推測されている椎茸は、農業技術に関する歴史的な書物として知られる「王禎農書」に農作業や栽培方法が載っていて、中国では古くから食べられていたようです。
日本では、鎌倉時代には食べられていたようで、道元禅師の食に関する名著「典座教訓」には「日本の僧が中国に留学した際、地元の老僧が乾しいたけを買いに来た」という逸話が残っているようです。
江戸時代には栽培も行われるようになり、生産量が増えるにつれ広く浸透していくと、明治時代の中頃には乾燥用椎茸の原木栽培が始まり、昭和の中頃からは菌床栽培による生し椎茸の栽培も始まりました。
日光浴で栄養価UP!
生椎茸も乾燥椎茸も、日光に当てるとビタミンDが増え、香りが増すと言われていて、調理する前にカサの裏側を上にして、1~2時間軽く干すだけでも効果があるようです。
うま味のもとであるグアニル酸は、加熱すると増加し、香りとうま味がアップします。
また、昆布やかつお節の出汁と合わせると相乗効果でうま味が増します。
食べる前の準備は丁寧に
生椎茸は水で洗うとうま味や風味が流れてしまいます。
汚れが気になる場合はふきんなどで軽くふくか、さっと洗う程度にしましょう。
ただし、原木栽培のものはひだの部分にゴミが付いていることがあるので、しっかりと確認をしましょう。
長期保存にも最適で、香りやうま味も凝縮されている乾燥椎茸は、低温で時間をかけることでうま味成分が増加します。
水温5~6度で8時間以上が理想とされるので、時間に余裕を持って準備することをお勧めします。
戻した水は捨てずに出汁として使うと料理の味わいが深まります。
生椎茸はソテーや揚げ物、炒め物などにして食感や風味をを楽しみ、乾燥椎茸はうま味と香りを生かして煮物やちらし寿司、汁物などに使うとよいでしょう。