約1,500年にわたって人々に親しまれてきた、トルコ共和国の世界的な文化遺産であるイスタンブルの「アヤソフィア・グランド・モスク」は、現在、この歴史的建造物を次の世代に残すため、これまでで最も大規模な修復プロジェクトが行われています。
その中心となるのが、建物の象徴である「巨大ドーム」で、長い時を経ても崩れない強さと、美しさを保つため、ドームの補強と修復が本格的に始動しました。
アヤソフィアでは、トルコ政府が進める文化遺産保全プロジェクトの一環として、文化遺産の持続可能性を確保するために、数多くの考古学的発掘や修復作業が行われています。
この3年間にわたる大規模な修復と強化作業が進行中で、すでにいくつかの工程は完了しており、現在は、アヤソフィアの中でも特に象徴的な「巨大ドーム」の修復に力が注がれています。
今回の作業で、ドームを大地震にも耐えられる強さにする一方、内部に残る歴史的なモザイク画を守ることに重きが置かれ、作業はすべて外側から行われ、内側への影響を最小限に抑えるよう工夫されています。
さらに、安全かつ効率的に作業を進めるため、東側には高さ41メートル、アームの長さ60メートルの専用クレーンが設置される予定で、このクレーンはアヤソフィアの構造に合わせて特別に設計されたもので、建物に適切な距離を保ちながら、安全に操作できるようになっています。
今回の修復プロジェクトは、いくつかの段階に分けて進められており、これまでにもスルタン・メフメト3世、セリム2世、ムラット3世の霊廟や、かつて子どもたちが学んだ「スィビヤン・メクテビ(初等学校)」、礼拝時間を測るための「ムヴァッキターネ(時計部屋)」といった施設の修復が終了しています。
また、これまで一般公開されていなかったギャラリーフロアも清掃・整備が行われ、現在は見学が可能となり、敷地内にあるすべての建造物は3Dスキャンで詳細に記録され、デジタル上にバーチャルモデルが作られています。
こうした包括的な修復プロジェクトを通じて、アヤソフィア・グランド・モスクは、創建当時の姿を可能な限り残しながら、未来へとその価値を受け継いでいくことを目指しています。
古代帝国が息づく歴史的シンボル
アヤソフィアは、1985年にユネスコの「イスタンブル歴史地区」として世界遺産に登録された、まさに歴史を象徴する建築物で、およそ1,500年前、もともとはキリスト教の大聖堂「聖ソフィア大聖堂」として建てられ、当時のキリスト教世界において最も重要な教会のひとつとされていました。
その後、オスマン帝国のスルタン・メフメト2世によってモスクへと転用され、内部にあった金色のモザイクやフレスコ画の上には、精緻なイスラム文様が施され、時代とともに4本のミナレットも追加され、現在の姿へと近づいていきます。
中でも注目されるのが、スルタン・セリム2世の時代に建てられた西側の2本のミナレットで、これらは、オスマン建築の巨匠・ミーマル・スィナンによって設計・建設されました。
セリム2世はミナレットの建設とあわせて、当時すでに構造に劣化が見られたアヤソフィア全体の修復もスィナンに命じ、ミナレットの施工と並行して、建物に耐震補強を施し、外壁に控え壁を加えるなど、建物の寿命を大きく延ばすための重要な工事が実施され、アヤソフィアは数世紀にわたる大地震にも耐え抜くことができたのです。
トルコはアジアとヨーロッパを結ぶ要所として、何世紀にもわたり文化的な交流と多様性の拠点と考えられ、その文明が反映された歴史、遺跡、自然や美食を有し、多目的なデスティネーションとなりました。
伝統とモダンが融合した芸術やファッションをはじめ、ダイナミックなショッピングやエンターテインメントライフによって世界中から訪れる人々を魅了し続け、2024年には全世界から過去最高の6,226万人の観光客が訪れ、2023年にトルコ共和国として建国100周年、2024年には日本との外交関係樹立100周年を迎えています。
トルコ共和国
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