旬感食 to ナ美

旬感食 to ナ美 Vol.5「大根」

生でも加熱しても、漬け物にしても美味しく、さまざまな料理に使える「大根」は、日本人にとって昔から馴染み深い野菜の一つです。

大きさや形もさまざまで、たくさんの種類がある大根ですが、日本では白い物が一般的で、それに紅いラディッシュが知られているくらいでしょう。

海外では真っ黒な物や表面だけでなく芯まで紅い物もあり、最近になって日本でもカラフルな大根を栽培する農家も各地で増えているようです。


 

品種と旬

全国で一般的に流通しているほとんどは「青首大根」と言われている「宮重」をルーツとした種類の物になりますが、日本には古くから各地方で栽培されている地大根といわれる物も多数あります。

大根本来の旬は、晩秋から冬にかけてと言われ、この時期に収穫する大根は甘味がありみずみずしく、煮物やサラダ、漬け物などに向いています。

近年では、品種改良も進み、春に収穫される品種から夏、秋、冬と季節によって収穫される品種もあり、それぞれの旬によって一年を通じて四季を感じることができます。

春から夏の物は辛みが強く、秋から冬の寒い時期の物はみずみずしく甘味が増すと言われています。

 

 

産地と歴史

地中海沿岸や中央アジア、中国など原産地については諸説ありますが、その歴史は古く、古代ギリシアでは金の容器に入れられてアポロ神殿に奉納されており、古代エジプトのピラミッドの碑文には玉ねぎ、にんにくとともに大根が支給されたと記録が残されています。

日本での栽培起源は明らかではありませんが、「古事記」の仁徳天皇の条に「淤富泥(おほね・大根)」の文字を含む歌があることから、奈良時代には中国、朝鮮半島を経て伝わっていたと考えられています。

江戸時代に入ると栽培が本格化し、全国でさまざまな品種が誕生しました。

現在多く出回っている「青首大根」が主流になったのは1970年代に入ってからと言われています。

 

 

胃腸に優しい栄養素

大根には胃腸の働きを活性化する複数の消化酵素が含まれています。

そのひとつ、「ジアスターゼ」はデンプンを分解する働きがあり胃もたれや胸焼けに効果があると言われています。

また、「オキシターゼ」という酵素は発がん物質を解毒する作用があるといわれ、がん予防にも期待できます。

特有の辛味成分である「イソチオシアネート」は血液をサラサラにする作用があると言われています。

大根の葉は、カロテンやビタミン・ミネラルを豊富に含む緑黄色野菜なので、葉付き大根が手に入った時は、葉も調理して食べるようにしましょう。

 

 

漬物、煮物、鍋、サラダ、刺身のつまなど、さまざまな食べ方で楽しめる大根ですが、一度に食べきれないときは、うま味や栄養価も濃縮される干し野菜にして保存すると良いでしょう。